★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第8節 復旧及び建替え

第六十一条 建物の一部が滅失した場合の復旧等
第六十二条 建替え決議
第六十三条 区分所有権等の売渡し請求等
第六十四条 建替えに関する合意
   
被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法
建築物の耐震改修の促進に関する法律

[-a.第61条(建物の一部が滅失した場合の復旧等)

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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第一章 建物の区分所有
第八節 復旧及び建替え
 
(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
第六十一条
1項 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
   
過去出題 マンション管理士 R02年、R01年、H18年、H15年、H14年、
管理業務主任者 H30年、H18年、H14年、

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、「脱書面、脱対面」で、新しく8項、12項が創設され、また、文章も変更になった条文です。

建物価格の1/2以下の滅失...建物の専有部分(室)は、持主が独自に復旧できるが、他人もからむエントランスや階段室などの建物の共用部分の復旧は制限がある。
    この第61条も複雑な条文で、整理が必要。
    滅失が建物価格の1/2以下か1/2超かで、共用部分の復旧をするか、建替えるかなど規定が異なる。
    また、建物全体の価格の1/2以下であって、該当の部分での専有部分・共用部分の割合は問われていない

*建物価格とは、算出基準が曖昧な規定。

復旧...滅失前の状態に戻すこと。元の形を変えると、共用部分の変更となり、復旧ではなくなる。
       変更となるとこの規定ではなく、共用部分の変更の規定(区分所有法第17条、第18条など)の適用になる。


      また、建物が全部滅失(完全に無くなる)なら、建物については、区分所有法の対象から外れ、跡に残された土地についての、共有関係となり、民法の規定が適用される。


★ここからは、「第1章 建物の区分所有」の「第8節 復旧及び建替え」に入ります。
 「第8節 復旧及び建替え」は、第61条から第64条までで構成されています。

★第61条は「建物の一部滅失に関する規定」です。 〜全壊ではない〜

 この条文も実に分かりにくい文章です。その原因は、規定のなかで参照されている条文が、第3項とか次条とか、まだ読んでいない箇所にあるためです。
まったく、後の条文が出てくるとは、法律の構成が悪くて作る時の不手際です。

  また、後で出てきます「建替え」とこの「滅失」の関係、集会の決議を待てない緊急時における対応方法はどうするのか、建物価格というが時価の決め方は具体的にどうするのかなど、本第61条は改正がなされても不明な点が多いため、今後の改正が待たれる条文です。

★建物の共用部分の復旧が多数決の制約をうける...区分所有者個人の物である建物の「専有部分」は、自分で勝手に復旧していい。階段・廊下などの共用部分もすでに工事に着手していれば、費用は請求できる(2項)

★1項の文章にある、第三項とは、「共用部分」の復旧を集会で決議する規定です。

<参照>区分所有法 第61条3項:

 第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

★また、1項の文章にある、次条第1項とは、区分所有法第62条1項で、まだ勉強していない、建物を取り壊す、「建替え決議」の場合です。

<参照>次条第1項;区分所有法 第62条1項:(建替え決議)

 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、
かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に
新たに建物を建築する旨の決議
(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

★そして、1項の文章にある、区分所有法第70条1項は「団地内の一括建替え決議」の場合です。この第70条も、参照条文が多くて、まったく読み難い条文です。

<参照>区分所有法 第70条1項 :(団地内の建物の一括建替え決議

 団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、

当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、
第六十二条第一項の規定にかかわらず、
当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、
当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、
当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)
若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に
新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。

ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、
それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。

(注:後で出てくる団地関係での集会では、「一括の建替え決議」は出来ますが、一棟の「一部滅失の復旧の決議」は出来ません。団地関係には、この第61条は準用がありません。) 

★建物の一部滅失に対応する

 木造にせよ、鉄筋コンクリート造りにせよ、建物は数十年以上の利用ができる耐久消費財ですから、時間の経過で完全にボロボロになり、これでは利用不可能でもう「建替え」をしなければならないという時期に至る途中で、火災やガス爆発、地震、津波、洪水、土砂崩れ、電車の飛び込みなどの事故・災害によりその建物の一部が壊れる可能性があります。
そこで、まれであっても、建物の一部が壊れれた事態にどう対応するのかの規定が第61条です。

 本第61条の構成は、全部で 15項 13項 もあり長いのですが、大きく分けると、建物の滅失に関して、次の ア と イ の2つの部分から成っています。

  ア. 1項から4項までが、建物の価格が 1/2以下 の「小規模滅失による復旧

  イ. 5項から 14項 12項 までが、建物の価格が 1/2超 の「大規模滅失による復旧」

   の規定となっており、建物の滅失の規模の大小を判断するのは、建物価格の1/2以下の滅失かどうか、がその基準となっています(1項・5項)。
 例えば、滅失前の建物全体の価格(算出規定が不明確ですが)が、10億円で、建物の一部が滅失後に4億円となれば、これは、小規模滅失に該当するとなります。

 最後の 15項 13項 は、小規模滅失と大規模滅失の両方での、償還請求での支払いや代金の支払い期限の許与という構成です。

★ 滅失の判断は? → 金額で

  建物の滅失の判断基準としては、失った建物の面積の大小による方法もありえますが、マンションで壊れた共用部分である廊下や階段を復旧するときの費用は区分所有者全員が分担しますから、この1項の条文のように金額面で判断をする方法も合理的といえるでしょう。

★滅失は建物価格の1/2(半分)が、判断の目安
 区分所有法の創案者は、建物の滅失の程度により復旧費用の負担に差が生じるので、そのまま修理して管理を続ける程度の小さな滅失か、それとも、もう建替えを考慮する程の大きな滅失かの区分けの必要性を感じ、そこで、建物価格の1/2(半分)を目安にしたようです。

 今後出てきます条文を踏まえ、全体を纏めると下のようになります。

★建物の一部の滅失

 建物の価格」とは1棟全体の建物の価格であり、区分所有建物は、
  @専有部分と 
  A共用部分(法定も規約も含めて) 
 で構成されますからその価格も専有部分と共用部分の合算額で計算されます。
 換言すれば、滅失の対象は建物の専有部分と廊下や外壁など共用部分の双方であるということです。この場合、専有部分と共用部分の滅失に占める割合は、要件となっていませんから、専有部分の滅失が90%で共用部分の滅失が10%でも、また逆の場合でもかまいません。

 この滅失した建物の価格を求める場合、滅失した建物の価格はその交換価値(価格)を近隣事例等で評価して決定することになるのでしょうが、滅失しなくとも建物は経年劣化し且つ設備等は陳腐化して行きますから、建物の価格は新築時から日を経る毎に低下して行くことは避けられません。

 そのため、滅失した建物の価格がその復旧費用に遥かに及ばないことも起こり得ます。

 小規模滅失とされる、建物価格の1/2以下は、文章上分かり易い基準ではありますが、建物の価格以上の復旧費用(修繕費)が必要という場合には、建物価格でなく復旧費用が建物価格の全体の1/2以下という基準も立法論的にはあるかもしれません。

 この点、小規模滅失(建物価格の1/2以下)の場合は規約で別段の定めが認められます(4項)から、多大な復旧費用がかかる場合の措置の要件を規約で設定することも当然可能と思われます。

 なお、小規模滅失であっても、復旧するのに多大な費用がかかり、それではもう修理をせず、建物を全部壊して「建替え」にしようと大多数の区分所有者が判断すれば本第61条の「復旧」ではなく、あとで出てきます第62条の「建替え」や、団地であれば第70条の「一括建替え」を選択できるようにしています。

 本1項は、それら「建替え」の項目をも引用し、規定しています。

★単独復旧には制限がある
  1項の小規模滅失(建物価格の1/2以下)の場合、区分所有権の対象となる建物の専有部分の復旧は当然に、持主である各区分所有者が費用を自己負担してできますが、廊下や階段、時には外壁など建物の共用部分であっても、各区分所有者が復旧でき、その共用部分の復旧にかかった費用は、他の区分所有者にも請求ができます。(2項)
 しかし、その共用部分の復旧の工事に着工する前に、集会が開催され、その集会で「復旧の決議」がなされたり、また「建替えの決議」がなされると、もう区分所有者個人では共用部分の復旧はできなくなっていますから、区分所有者が単独で、滅失した共用部分を復旧するのは、緊急で不可欠な状況であることが必要とされます。


 なお、特定の専有部分(室)が、物理的に完全に滅失(無くなった)した場合でも、この区分所有者は形式上、そのまま区分所有者として扱われ、以前と同様に共用部分の持分を有します。

★滅失とは

  滅失」とは、物の効用が消滅することをいい、必ずしも建物が経年劣化での物理的に消滅する場合に限ったものではありません。
 社会的、経済的にみて建物としての効用が失われることも含みます。
 地震、津波、土砂崩れやクレーン車転覆、脱線列車の突入、ガス爆発等による建物の一部倒壊にかぎらず、火災等で建物の外観上は住めるようであっても、建物の内部が使用できない状況であれば滅失したといえます。

 なお、滅失した原因に関して本第61条は何ら規定がありませんから、地震や津波等の天災地変による場合であろうと、爆薬による人災であろうと、手続きに変りはありません。

 また、滅失の原因によっては加害者から賠償金が受領できることや保険金が出ることがありえますがそれがこの第61条での手続きとは無関係である点も同様です。

★建物全部滅失の場合 → 区分所有法の対象から外れる

  


  ここで、注意しなければいけないのは、本第61条で定めているのは、小規模滅失にせよ、大規模滅失にせよ、滅失の程度の差はあってもまだ
区分所有建物が一部は残っている状態であることです。

 地震や津波・火災・土砂崩れ等により建物が全部滅失した場合(この全壊の判定も難しいのですが)には、区分所有法で定める、建物の専有部分が1つも存在しなくなりますから、区分所有法で定める「区分所有関係」がなくなり、もはや区分所有法に基づく集会を開いて「復旧」や「建替え」の決議ができなくなります。

 建物が全壊となると区分所有者に残された権利は、敷地(土地)に対する権利(敷地利用権=所有権の共有、地上権、賃借権の準共有)となります。

 そこで、建物の全部滅失の場合は、区分所有法の適用から外れ、民法被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)を適用して建物の再建を行うことになります。
しかし、その適用にあたっては、建物が一部残っているか、全部滅失しているかの判定の困難さはあります。
 平成7年に起きた阪神・淡路大震災では、この全部滅失の判定で論争が発生しています。


 建物全部滅失の場合に、民法の適用となると、その敷地に区分所有建物を再建することは、「共有物の変更」となり、敷地共有者「全員の同意」が必要となります。(民法第264条→第251条)。
 敷地共有者全員の同意が必要ということは、共有者の誰か1人でも反対があれば、その敷地に区分所有建物を再建することができないということです。
 また、
民法では、共有者は、いつでも共有物の分割も請求ができる(民法第256条)ため、敷地共有者が元の敷地を分割すると、再建に新しい所有者が関係し大きな障害となります。

 そこで、この
民法の共有理論を変更し、団体での多数決理論を取り入れた「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)(平成7年(1995年)3月24日公布)」が制定されました。

<参照> 民法

準共有
第二百六十四条  この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

(共有物の変更)
第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない

(共有物の分割請求)
第二百五十六条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。


★マンションで、民法の共有関係を採用するのは困難 → 「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」の制定へ 全員の合意 → 多数決へ
 
 多くのマンションが倒壊した事例としては、平成7年(1995年)1月17日に発生した震度7の「阪神・淡路大震災」があります。

   

 今まで勉強してきたように、マンションという共同住宅では、民法第251条で定める共有関係の「共有物の変更には全員の同意を得る」ことが不可能である現実から、区分所有法では多数決の原理を民法の特別法として採用しました。

 しかし、阪神・淡路大震災では、地震の発生で建物が全部倒壊したため、区分所有法で定める建物の専有部分に関する権利=区分所有権が消滅してしまい、その結果、区分所有法の適用がなくなり、区分所有法で規定する集会を開催する建替えや復旧の手続きがとれず、区分所有法から
民法の適用に戻ることになり、建物倒壊の程度の判定の困難さや民法での全員の合意が得られないなどで被災したマンションの再建がまとまりませんでした。

   
     阪神・淡路大震災

 そこで、敷地共有者の4/5以上の多数決で建物が再建できる、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」が平成7年(1995年)3月24日に急遽施行されたというわけです。

 その概要は、取壊し決議制度の創設
  「
政令で定める災害により区分所有建物が大規模一部滅失した場合について,多数決により建物を取り壊す旨の決議をすることができるものとする制度(取壊し決議制度)を新設し,以下のような規律を設けるものとする。
  ・多数決要件
   
取壊し決議は,区分所有者及び区分所有法第38条に規定する議決権の各5分の4以上の多数によるものとする。
  ・期間制限
   取壊し決議は,政令の施行の日から起算して1年以内にしなければならないものとする。
  

 しかし、この法律の適用には、「政令で定める災害」という面倒な前提があるため、次の大きな災害、平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災では当初適用がありませんでした。

 
  平成23年の東日本大震災

★「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」の改正 (平成25年(2013年))

 大規模滅失なら、多数決で建物の取壊しの決議などができるように、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」が大改正された。 〜平成25年(2013年)6月施行〜

 平成7年(1995年)1月7日に発生した阪神・淡路大震災を受けて平成7年制定の「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」は、その後も、平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災での教訓から平成25年(2013年)6月26日施行で、大改正があり、大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)なら、全部滅失でなくても「建物の取壊し決議」と「建物と敷地の売却決議」が民法で必要とされた「全員の同意」から、区分所有者及び議決権の4/5以上の多数でできることになりましたので注意してください。

 (注:平成25年7月31日付けで、
  「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法第二条 の災害として、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)を定める。 」
  が公布され、即日、施行となりました。)

 そこで、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法は、今後想定される大規模な災害で、区分所有建物の取壊しなどを容易にする目的で大幅に改正され、新しく大規模滅失(建物の価格の1/2超の滅失)では、建物の取壊しが、区分所有者及び議決権の各4/5以上の承認でできたり、敷地の売却ができるなどが追加されています。この改正法は
平成25年(2013年)6月26日施行されました。

 *追加の敷地売却決議制度
  区分所有建物が政令で定める災害により滅失し,又は取壊し決議に基づき取り壊された場合について,敷地共有者の多数決により建物の敷地を売却する旨の決議をすることができるものとする制度(敷地売却決議制度)を新設し,以下のような規律を設けるものとする。
  ・多数決要件
   敷地売却決議は,議決権の5分の4以上の多数によるものとする。

*区分所有建物の再建等に関する特別措置法でできること
  1.全部滅失した区分所有建物に対して、
   敷地共有者等の議決権の五分の四以上の多数で、
   ・再建決議...該当の土地に建物を建築する旨の決議
   ・敷地売却決議...敷地共有持分等に係る土地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議
  2.一部滅失した区分所有建物に対して、
   区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、
   ・建物敷地売却決議...当該区分所有建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議
   ・建物取壊し敷地売却決議...当該区分所有建物を取り壊し、かつ、これに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。次項において同じ。)を売却する旨の決議
   ・取壊し決議...当該区分所有建物を取り壊す旨の決議


   他に団地に対する規定もある。






*建築物の耐震改修の促進に関する法律

また、地震の災害に関して、同様に、「
建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」も改正されました(平成25年(2013年)11月25日施行)ので、こちらも注意してください。

★改正:建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)と区分所有法との関係における注意点 〜平成25年(2013年)11月施行〜

  ・耐震診断を受けて、耐震改修が必要と認定されると、集会の決議が、区分所有法第17条1項の「その形状又は効用の著しい変更」に該当しても、特別多数決議(区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数)から普通決議(過半数)に緩和されました。(耐震改修促進法第25条3項参照)
  耐震工事が容易になりましたから、この耐震改修促進法の改正にも、注意してください。

 <参照>区分所有法第17条

(共用部分の変更)
第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

 

 改正:建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)

  第六章 区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定等

(区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定)
第二十五条  耐震診断が行われた区分所有建築物(二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建築物をいう。以下同じ。)の管理者等(同法第二十五条第一項 の規定により選任された管理者(管理者がないときは、同法第三十四条 の規定による集会において指定された区分所有者)又は同法第四十九条第一項 の規定により置かれた理事をいう。)は、国土交通省令で定めるところにより、所管行政庁に対し、当該区分所有建築物について耐震改修を行う必要がある旨の認定を申請することができる。

2  所管行政庁は、前項の申請があった場合において、当該申請に係る区分所有建築物が地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして国土交通大臣が定める基準に適合していないと認めるときは、その旨の認定をすることができる。

3  前項の認定を受けた区分所有建築物(以下「要耐震改修認定建築物」という。)の耐震改修が建物の区分所有等に関する法律第十七条第一項 に規定する共用部分の変更に該当する場合における同項 の規定の適用については、同項 中「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議」とあるのは「集会の決議」とし、同項 ただし書の規定は、適用しない。

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(要耐震改修認定建築物の区分所有者の耐震改修の努力)
第二十六条  要耐震改修認定建築物の区分所有者は、当該要耐震改修認定建築物について耐震改修を行うよう努めなければならない。

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(要耐震改修認定建築物の耐震改修に係る指導及び助言並びに指示等)
第二十七条  所管行政庁は、要耐震改修認定建築物の区分所有者に対し、技術指針事項を勘案して、要耐震改修認定建築物の耐震改修について必要な指導及び助言をすることができる。

2  所管行政庁は、要耐震改修認定建築物について必要な耐震改修が行われていないと認めるときは、要耐震改修認定建築物の区分所有者に対し、技術指針事項を勘案して、必要な指示をすることができる。

3  所管行政庁は、前項の規定による指示を受けた要耐震改修認定建築物の区分所有者が、正当な理由がなく、その指示に従わなかったときは、その旨を公表することができる。

4  所管行政庁は、前二項の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、要耐震改修認定建築物の区分所有者に対し、要耐震改修認定建築物の地震に対する安全性に係る事項に関し報告させ、又はその職員に、要耐震改修認定建築物、要耐震改修認定建築物の敷地若しくは要耐震改修認定建築物の工事現場に立ち入り、要耐震改修認定建築物、要耐震改修認定建築物の敷地、建築設備、建築材料、書類その他の物件を検査させることができる。

5  第十三条第一項ただし書、第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。


 区分所有法第61条の解説に戻ります。

建物の価格の2分の1以下(小規模滅失)に相当する部分が無くなったときには、各持主(区分所有者)が、自分の室だけでなく、無くなった廊下や階段などの共用部分も単独で復旧していい。(自分の専有部分は、いつでも直せる。規約があるとそれに従うが。)

    (問題点はある:建物の価格は、どう見積もっているのか? 購入時の価格は影響しないのか? 現在の時価なら経年の係数はあるのか? 地価はどう反映するのか? 誰が判断するのか?)

  参考:阪神淡路大震災における日本不動産鑑定協会の「大規模滅失」か「小規模滅失」かの簡易の判定マニュアル(平成8年(1996年)2月公表)
  取引事例などが乏しいので、簡易な判定をする。
   ・建物の再調達価格から経年減価を控除した額を一部滅失前の建物全体の価格とし、復旧に必要な補修費の見積額を比較して後者が前者の2分の1超であれば大規模一部滅失とする

    ◎しかし、エントランスや外壁などの建物の共用部分は、勝手には直せない。復旧工事をする前に集会の決議があれば、それに従うこと。
      決議前に、既に復旧に着手していれば、そのまま復旧を完成させていい。

    ◎また、「建替えの決議」があれば(第62条1項、第70条1項(団地))直せないし、規約があれば、それに従う(4項)

    みんなのものであるエントランスや階段などの共用部分を直したときは、他の区分所有者に対して、専有部分の床面積の割合(第14条)で、費用を請求できる。(2項)

間違えないように。自分のものである建物の専有部分の復旧は、自己負担で、いつでもできる。他の人に影響するエントランスや廊下、階段、外壁など建物の共用部分の復旧が制約を受ける。 


★自分の専有部分が全部滅失しても、依然としてそのマンションの区分所有者である。

 建物の部分である専有部分(室)が無くなれば、区分所有法で定める区分所有権も無くなり、該当の専有部分を持っていた人は、区分所有者で無くなると考えた人もいるでしょう。
 滅失では、この場合でも区分所有者として扱われます。


★どうやって復旧するのか?

 地震やガス爆発の災害等により階段や廊下が欠けた時などは、復旧のイメージもできますが、上下階の部屋が崩れ落ちてなくなった場合、どのようにして復旧するのでしょうか。
 下の階の人が自分の専有部分はもう復旧しないと言ったら、上の階の人は下の階の床や壁(共用部分)を復旧することになるのでしょうが、集会は復旧しないと決議したら、費用負担はどうなりますか?

 また、滅失により、そのマンションに住めなくなった場合でも、管理費等は払う必要があるのか、

 暇な時に考えてください。


★JR福知山線脱線事故とマンションの損壊

  お覚えているでしょう。
  平成17年(2005年)4月25日午前9時18分頃に西日本旅客鉄道(JR西日本)福知山線尼崎駅 - 塚口駅間で列車が脱線し、107名の死者と負傷者562名を出す未曾有の大惨事となった事故です。
 この事故の列車は7両編成で、列車の前5両が脱線し、そして先頭の2両が線路脇の9階建てマンションに激突しました。
 先頭車両は1階駐車場へ突入、2両目はマンション壁面へぶつかり原形をとどめない形で大破しました。線路とマンション間の距離は6mしかありませんでした。

 その被害を受けた、マンションには47世帯が居住していましたが、倒壊した場合などに備えてJRの用意したホテルなどへ避難しました。

 JR西日本は電車が激突したマンションを買い取り、慰霊碑を建てることを検討していると発表し、2006年12月20日、補償交渉がまとまり、マンションの所有権がJR西日本に移ったことが分ったとのことですが、事故調査委員のJR西日本への情報の漏えい問題の発覚もあったせいか、2010年2月現在では、まだマンションは取り壊されていないようです。
 2013年6月現在でも、まだ、取り壊すか、記念として残すか、未定のようです。

 2016年7月、9階建てだったマンションの上部を取壊し4階までを残し、衝突跡が残る部分などを保存する工事に着手した。
合わせて、マンションの東側に慰霊碑、広場南東には管理棟を設け、事故についての資料室を作る工事を行っているという。



★第61条1項の但し書き、「共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない。」は、多くの問題を含んでいる。

  現実にマンションでの集会の開催に携わった人なら、災害時でない通常でも集会を規定の通りに招集し開催するのには、かなりの時間がかかることを体験しているでしょう。

 例え小規模滅失であっても、壊れた階段や廊下などの共用部分の復旧を早急にしなければ居住者は生活ができない事態も想定され、そのような場合には、第61条1項の但し書き、第三項での「復旧の集会」や、次条(第62条)第一項(建替え集会)又は第七十条第一項(団地での一括建替え集会)での決議がでるまでに、区分所有者は単独で復旧の工事に着手します。

 そこで、第61条1項の但し書きに規定される各種の集会が開催されなければいいのですが、もしもそのような集会が開催されると、「復旧の工事に着手するまで」が、集会の招集通知を発した時点か、決議があった時点かが、特に説明会の開催も要求し、建替え決議に至るまで、長い時間が必要とされている建替えでは、曖昧な文章となっています。

 共用部分の復旧に関しては、集会で復旧が否決された場合の対応、また、復旧工事をしてしまった後で建替え決議がなされた場合の対応などを明確にした、今後の法整備が必要な箇所です。

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第六十一条

2項  前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。

過去出題 マンション管理士 H18年、
管理業務主任者 未記入

★小規模滅失で立替えた共用部分の復旧費用の清算

 区分所有法第61条1項の規定により、小規模滅失(建物価格の1/2以下)の場合には、復旧の工事に着手するまでに、復旧に対する集会の決議や、建替えの集会の決議がなければ、区分所有者は専有部分の復旧だけでなくそれに付随する廊下や階段などの共用部分の復旧を単独でできます。



 建物の専有部分については当該区分所有者自身の物である以上その復旧費用の全額はその区分所有者が負担しますが、廊下や階段などの共用部分についてはそれを共有する全ての者(全体共用部分か一部共用部分かでその範囲は異なる)の物である以上、他の共有者が復旧をした者から受けた利益の償還が問題となります。

 この場合は、自分の持分を超えた部分の復旧は、他人の事務管理に関することであり「義務無くして他人のために事務を処理した」のですから民法第697条の事務管理が成立し、他の人に対して民法第702条1項に基づく費用償還請求権が認められることになります。

<参考>民法第697条(事務管理)

第六百九十七条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。

2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。

<参考>民法第702条(管理者による費用の償還請求等)

第七百二条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。

3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。

 区分所有法第61条2項は、この民法の事務管理と管理者の費用償還の規定を確認したものといえます。

◎更に、民法で規定する事務管理はいわば黙示の委任ですから委任の規定が準用され、その旨定めた民法第701条には規定がないものの委任に準じるというの趣旨からすれば民法第702条1項の解釈には民法第650条の規定を補って読むべきでしょう。

<参考>民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる

2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。

3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

 従って、復旧費用の支出時からの利息も償還対象となります。

★規約で別段が定められる 〜小規模滅失なら〜

 小規模滅失(建物価格の1/2以下)で廊下や階段などの共用部分を復旧した費用の各区分所有者の償還すべき額(負担額)は、共用部分の持分に応じるのが当然であり(2項)、それは区分所有法では原則として第14条の割合(専有部分の床面積)によりますが、規約で別の持分の定めがあればそれにより、またこのような小規模滅失の場合の費用負担割合が区分所有法第14条の持分とは別に規約で定まっているのなら更にそれによることになります(第61条4項)。

★償還請求額が払えない区分所有者には、支払い猶予がある

 なお、この償還額(負担金)が一時で支払うには多額になるような場合には、支払の請求を受けた他の区分所有者は、裁判所に申し立てることで支払の猶予期間が与えられることがあります(第61条13項)。

<参照>区分所有法 第14条: 

各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。


★区分所有法の解説もかなり後半に入ったので、前の区分所有法第14条の復習です。

民法の共有では、持分は均等(相等しい)になる。でもマンションでは各室(専有部分)の広さが違うので、均等だと不公平となる場合が多い。そこで、原則、共用部分の持分は、自己所有部分(専有部分)の床面積での比例配分にした。  
     しかし、規約で持分を専有部分の床面積でない別の定めもできます(第14条4項)。   

<参照>共有 民法 第250条: 
(共有持分の割合の推定) ;各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

<参照>区分所有法 第14条: 

各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による


<参照>区分所有法:第14条2項  

 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
 

<参照>区分所有法:第14条3項  

前二項の床面積は、壁その他の区画の
内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

        ★専有部分の床面積の算出方法には、2種類ある。

         @壁芯計算...壁の中心から計算する。

         A内法(うちのり)計算...壁の内側から計算する。 <---区分所有法はこれで(原則)

           どうして、これが問題になるかというと、一般の建物は壁心計算だから。

    *建築基準法の床面積は、壁芯計算だけ

<参照>建築基準法 施行令第2条1項3号

三  床面積 建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の
中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。

    *不動産登記法でも、床面積は、普通なら壁芯計算だが、マンション(区分建物の専有部分)は、内法計算で登記されている。

<参照>不動産登記規則 第115条(建物の床面積)

 建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。

        

 ★ しかし、規約で別の定め可(第14条4項)。

区分所有法: 第14条4項  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

      ★規約があれば特に専有部分の床面積を考えなくてもいいということ。また、床面積を使うなら内のり面積を壁心面積にもしてもいい。


★工事着手後に集会で、建替えの決議がなされた場合

 建物の小規模滅失(建物の価格の1/2以下)においてある区分所有者が単独で廊下や階段など共用部分の復旧工事を始めた後、また工事が完了した後に、集会が開催され、集会で建替えの決議がなされると、復旧費用を、他の区分所有者に請求できるのかという問題もあります。
 この場合、復旧費用は無駄になりますが、2項により、復旧費用は、他の区分所有者に請求できると考えます。

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第六十一条

3項  第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

過去出題 マンション管理士 H22年、H18年、H14年、
管理業務主任者 H19年、

小規模滅失では集会で復旧の決議をすることができる...建物の価格の2分の1以下(小規模滅失)でも、廊下や階段などの共用部分はみんなの物なので、工事に着手する前に復旧するかどうかを集会で決めてもいい。(普通決議=過半数 でいい

★また、小規模滅失なら、集会を開かずに、事前に規約で取り扱いを定めることができる。(4項)。 ただし、大規模滅失(建物の価格が1/2超)の場合は、規約での定めはできない。必ず、毎回集会を開いて決めること。
 なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

★3項は本第61条1項の但し書きで引用されている規定です。

  小規模滅失(建物価格の1/2以下)で滅失した建物の専有部分は、その区分所有者の費用で復旧しますが、廊下や階段などの共用部分を復旧する費用は、最終的には各区分所有者が負担するため、集会を開催することができます。
  この集会を開催する趣旨は、各区分所有者が単独に共用部分の復旧をすると、工事の内容などが明らかでなく、費用の負担も不明確になるおそれがあるために、区分所有者全員の集会において、区分所有者が共通の認識を持つことにあります。
 復旧の工事に着手するまでに、集会で、普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)により復旧の決議があれば、もう区分所有者が個別では、滅失した廊下や階段などの共用部分の復旧できません。
 ただし、小規模滅失(建物価格の1/2以下)という被害の程度が軽いことを前提に、規約での別段の定めも許されています。(4項)

★「復旧」と「変更」の違い

  この普通決議ができるのは、あくまでも滅失した部分を元の状態に戻す「復旧」であり、共用部分を滅失前の状況と異なる「形状又は効用の著しい変更を伴う状態にする」場合(区分所有法第17条)には、特別多数決議になります。

<参照>区分所有法 第17条:(共用部分の変更)

第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

★復旧決議が否決になったら

  復旧決議が否決されれば、区分所有者の過半数の人が復旧を希望しないので、区分所有者が個別での復旧はできなくなり、滅失した廊下や階段などの共用部分はそのままになります。
 ただし、使用に不可欠な共用部分の復旧は保存行為としてできます。
 そして、保存行為でかかった費用は、他の区分所有者に請求できます。

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第六十一条

4項  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H22年、H16年、
管理業務主任者 未記入

妨げない...建物の価格の1/2以下の滅失(小規模滅失)の場合には、廊下や階段などの共用部分の復旧については、規約で別の方法を規定すれば規約が優先する。

*前三項の規定...区分所有法第61条1項、2項、3項をさす。
             規約の設定ができるのは、小規模滅失の場合だけで、大規模滅失(建物の価格の1/2超)では、別途の規約は作れない

★小規模滅失での、規約による別段の定めの例

  例えば、「小規模滅失では、集会の決議がなくとも、区分所有者は全員で復旧をすることができる」とか、
  また、逆に、「小規模滅失に係らず、建物の一部滅失の場合は、復旧は、すべて集会の決議による」など。

この、小規模滅失と大規模滅失、建替えは全体で出題されやすいので注意のこと

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第六十一条

5項  第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

過去出題 マンション管理士 H19年、
管理業務主任者 H19年、H17年、

第一項本文に規定する場合を除いて...建物の価格の 1/2超 の滅失の場合、廊下や階段などの共用部分の復旧はこの5項の適用となる。(大規模滅失という)
                            (分かり難い第61条1項”本文”をよく読めといっていますよ。ただし書きは入りません。)

★大規模滅失では、必ず集会を開いて対応を決めること

 規約で別段の定めはできない...小規模滅失(建物価格の 1/2以下 の滅失)なら、規約で別段の定めを認める(3項)が、大規模滅失(建物価格の 1/2超 の滅失)では、規約での別段の定めはできない。
 必ず、集会を開き、復旧か建替え(第62条参照)か、するのか、しないのかを決議すること。

  他の人もからむ廊下や階段などの共用部分の復旧が決議の対象で、建物の専有部分(室)の復旧は、小規模滅失でも大規模滅失でも、建物価格にかかわらず、いつでも持主(各区分所有者)が集会の決議がなくても復旧できる。

<参照>第1項本文に規定=1項 

 建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。

 

★建物の価格の2分の1を越える部分の滅失 〜大規模滅失

 第61条1項でも説明しましたが、第61条の構成は、全部で 15項 13項 あり、このうち1項から4項までが、小規模滅失(建物の価格の2分の1以下の滅失)の場合を規定し、この5項から 14項 12項 までが建物の価格の2分の1を越える部分が滅失した場合 〜大規模滅失〜 を規定します。
 なお、15項 13項 は、小規模滅失での復旧費用を支払えとか、大規模滅失でのマンションから出ていくので、建物と敷地の権利を買い取れといわれても、金の無い区分所有者に対して、裁判所が相当の期限を与えてくれる規定です。

 大規模滅失(建物の価格の2分の1超)の場合には、小規模滅失(建物の価格の2分の1以下)の場合と異なり、その滅失程度の甚大さを考慮して各区分所有者が単独で廊下や外壁などの共用部分を復旧することはできず、復旧をするには、必ず集会を開き、それには、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の特別多数決議が必要とされます(5項)。

 小規模滅失でも説明しましたが、建物の価格の算定については、建築経過年月、設備、滅失の個所などその算定の難しさはありますが、大まかに言えば、滅失前の建物の全体の価格が、10億円なら、滅失した建物の部分が、10億円の半分の5億円を超える場合がこの、大規模滅失に該当します。
 滅失した建物の部分において、専有部分と共用部分の割合などは、考慮されないのは、小規模滅失と同じです。

 また、小規模滅失では、その扱いについて規約での別段の定めが可能(4項)でしたが、建物の価格の2分の1を越える部分が滅失した場合(大規模滅失)に該当する対応は、規約での別段の定めはできず、すべて集会を開いて、各区分所有者が滅失の甚大さの認識を共有して対応します。



★どうして、大規模滅失では、必ず集会を開くのか
 〜被害は甚大〜

 大規模滅失において、必ず集会を開かせる理由は、建物価格の半分を超える被害があるということは、これを元の状態に復旧させるとしても、相当多額の費用が必要と見込まれます。
 そこで、大規模滅失の場合には、小規模滅失と異なり、区分所有者単独での廊下や階段などの共用部分の復旧を最初から許さず、そんなに費用がかかるなら、復旧でなくて、建替えの方法もあるのではと、区分所有者を集めて検討をさせるものです。


  なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

★大規模滅失の復旧決議では、単なる復旧だけでなく、共用部分の変更も許される?

 「復旧」とは、滅失した部分を、滅失前の状態に戻すことですが、大規模滅失においては、「復旧の決議」の要件として、区分所有法第17条の「共用部分の重大変更」と同じ「区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数」が必要とされていますので、共用部分の構造や用途を変更することも可能と考えて良いようです。

<参照> 区分所有法 第17条:(共用部分の変更)

第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

★大規模滅失で集会を開く際には、招集の通知に、議案+議案の要領 も必要

  本第61条5項の大規模滅失で復旧の集会を開催する際には、集会の通知を会日(開催日)より、原則として、1週間前(開催日を入れずに中7日あること)に、各区分所有者宛に発します。
 会議の目的が重要な内容ですから、通常の会議の目的たる事項(議案)の他にプラスして、議案の要領(決議内容を示すこと)も必要です。(区分所有法第35条1項、5項)

<参照>区分所有法 第35条1項、5項:(招集の通知)

第三十五条  集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

5  第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない

★大規模滅失の集会で、「復旧の決議」がなされると、

  今後は、区分所有者がその復旧に賛成か反対かで扱いが異なります。それが、6項以下に定められています。

★大規模滅失の集会で、「復旧の決議」がなされないと、

 各区分所有者が個別に復旧工事をして、工事にかかった費用は、他の区分所有者に求償することになります。 


建物の全部滅失の場合 はどうなるのか 〜大規模滅失ではなくなる〜

  

 でも解説しましたが、建物の一部の滅失は、大規模滅失や小規模滅失であっても建物の価格により、この第61条に規定された手続きによりますが、大規模滅失が大きくなり、100%完全に建物が滅失した場合は、この第61条の規定では対応できません。
ただし、100%の滅失と99%の滅失を区別するのは現実的には不可能で結局、社会通念(常識の法律用語)によるしかありません。

 それは、建物が全部滅失すると、建物にあった専有部分を目的とした区分所有法で定める区分所有権という権利は当然に消滅し(物の支配を目的とする所有権は物がなくなったら存続させる意味がなくなって消滅します。)、また、区分所有法で定める区分所有者の団体(管理組合)も消滅し、跡に残るのは土地に対する敷地利用権と、もとは建物であった残骸を共同で有する人々となります。

 建物が無い単なる土地の共有者の集合では、当然には区分所有者の団体は構成されません

 区分所有法で定める、建物の専有部分が存在しなくなり、「区分所有関係」がなくなるので、建物の全部が無くなると、この後は、民法被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)の適用で再建を行うことになります。

★大規模滅失なら、取壊しの決議などができるように、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」が大改正された。〜平成25年(2013年)7月施行〜

 なお、小規模滅失でも述べましたように、「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)」は、平成25年(2013年)7月26日施行で、大改正があり、大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)なら、全部滅失でなくても「建物の取壊し決議」と「建物と敷地の売却決議」が民法で必要とされた「全員の同意」から、「建物取り壊し決議」なら、区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数で、また「建物と敷地の売却決議」なら、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分価格の各4/5以上の多数でできることになりましたので注意してください。

 平成25年(2013年)7月26日施行です。 


◎「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」の改正点等の概要 〜平成25年(2013年)7月施行〜
 平成12年(2000年)の施行では、条文は全部で6条しかなかったのが、平成25年(2013年)施行から罰則を含めて全部で19条となった。

 ・政令で定める大規模災害なら

  ◎建物が大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)の場合...まだ、建物はいくらか残っている状況の場合
   *復旧の決議(区分所有法第61条5項参照)
   *建替え決議(区分所有法第62条参照) 
  新しく、区分所有法には規定のない
民法の全員の同意を多数決に変更した、  
  @建物敷地売却決議...区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各4/5以上の多数により@建物 と A敷地 を売却する。建物はそのまま敷地と共に売る。(第9条参照)

  A建物取壊し敷地売却決議...区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各4/5以上の多数により、@建物を取壊し その後、 A敷地を売却する。この決議は同時にすること。(第10条)
  B建物の取壊し決議...区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数により建物を取り壊す。敷地は売却しないので、敷地利用権の持分は関係しない。(第11条参照)

 ◎建物が全部滅失の場合...建物が残っていない場合(区分所有法にはもともと関連の規定はない)

  @再建の決議...敷地共有者等の議決権(敷地共有持分の価格)の4/5の多数で元の敷地上に建物を新しく建築する(復旧ではなく、再建築となる)。(第4条)
  新しく
  A敷地売却の決議...敷地共有者の議決権(敷地共有持分の価格)の4/5以上の多数で敷地を売却する(第5条参照)

  団地関係でも適用がある。
  @再建承認決議(第15条)
  A建替え承認決議(第16条)
  B一括建替え等決議(第18条)

★改正「被災マンション法」の”政令”が平成25年(2013年)7月31日:東日本大震災に適用された。
 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成7年法律第43号。平成25年法律第62号による改正後のもの。以下「改正被災マンション法」といいます。)第2条の災害として東日本大震災を定める旨の政令が,平成25年7月31日に公布・施行されました。これにより,東日本大震災に改正被災マンション法が適用されました。

 本法の改正による施行は、平成25年7月26日で、政令の方の公布・施行は平成25年7月31日です。



◎地震保険について 〜単独には加入できない。火災保険とセットで〜


  

地震保険は、「地震保険に関する法律」により、「国と保険会社が共同で運営している制度」で、地震保険だけの単独では契約できず、火災保険とセットで加入することが定められている保険です。
 通常の火災保険ではカバーできない地震や噴火、津波などによる火災・損壊・埋没または流失による損害を補償します。

  保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険しているため、どこの保険会社で入っても、地震保険の補償内容や保険料は一緒で、競争原理が働かない公共的な仕組みになっています。

*対象は、居住用の建物と家財(生活用動産)だけ
 地震保険の対象は居住用の建物と家財(生活用動産)です。
 
 建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度です。

 以下のものは対象外となります。
  工場、事務所専用の建物など住居として使用されない建物、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車等。

*保険金の支払金額
 地震保険に関する法律施行令第1条1項により、居住の用に供する建物も生活用動産も
  @全損
  A大半損
  B小半損
  C一部損
  の4区分に分けられ、この損害区分によって支払われる保険金額が決まっています。

 なお、支払う地震保険料は、建物の構造と都道府県によって異なり(東京都、千葉県、高知県などは高く、岩手県や日本海の鳥取県、秋田県などは安い)、損害区分の認定は損害保険会社が行い、それに従い、100%とか5%とかの契約金額が支払われます。
 平成29年(2017年)の改正以前は、全損・半損・一部損の3区分が、現在jは、半損が大・小に分けられ4区分になっています。
 


*支払できない条件
  以下のような場合には、支払がありません。
  ・故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
  ・地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
  ・戦争、内乱などによる損害
  ・地震等の際の紛失・盗難の場合

{設問} 令和1年度 管理業務主任者試験 「問41」

【問 41】 マンションの損害保険に関する次の記述のうち、区分所有法、地震保険に関する法律及び標準管理規約(単棟型)によれば、最も不適切なものはどれか。

1 地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没、流失による損害(政令で定めるものに限る。)をてん補する地震保険契約は火災保険契約等特定の損害保険契約に附帯して締結される。

〇 正しい(適切である)。 地震保険は、政府が再保険し、単独では加入できない。
 平成29年 管理業務主任者試験 「問43」 、

 地震保険は、被災者の生活の安定を目的とする保険であるため、保険の対象は住宅及び生活用動産に限られ、保険事故は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による全損・半損(大小)・一部損です。
 この保険は、独立の保険ではなく、火災保険(住宅総合保険、店舗総合保険など)の契約に附帯する形になっています。
地震損害の巨大性に対処するため、政府が再保険することとなっており、保険金の支払いの確実を担保しています。
 火災保険(主契約)の保険金額の30〜50%に相当する範囲内で保険金額を設定することになり、建物5,000万円、家財1,000万円が上限となっています。


 具体的には、地震保険に関する法律第2条2項2号、3号
「(定義)
 第二条 
 2 この法律において「地震保険契約」とは、次に掲げる要件を備える損害保険契約(火災に係る共済契約を含む。以下同じ。)をいう。
   一 居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること。
   二 地震若しくは噴火又はこれらによる津波(以下「地震等」という。)を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害(政令で定めるものに限る。)を政令で定める金額によりてん補すること。
   三 特定の損害保険契約に附帯して締結されること。
   四 附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十以上百分の五十以下の額に相当する金額(その金額が政令で定める金額を超えるときは、当該政令で定める金額)を保険金額とすること。」
 とあり、
 地震保険に関する法律第2条2項2号及び同項3号によれば、設問の「地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没、流失による損害(政令で定めるものに限る。)をてん補する地震保険契約は火災保険契約等特定の損害保険契約に附帯して締結される」は、正しい。


2 共用部分に係る損害保険料は、各区分所有者が、その有する専有部分の床面積の割合に応じて負担するが、規約でこれと異なる定めをすることができる。

〇 正しい(適切である)。 保険料の負担は、原則:その有する専有部分の床面積の割合だが、規約で別段の定めもできる。

 今度は、区分所有法が対象。
 まず、共用部分に係る損害保険料は、区分所有法第19条、
「(共用部分の負担及び利益収取)
 第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」
 とあり、
 共用部分の地震保険料などは、原則:区分所有法第14条の規定により、その有する専有部分の床面積の割合で負担しますが、この規定は、規約により別段の定めができますから、設問の「共用部分に係る損害保険料は、各区分所有者が、その有する専有部分の床面積の割合に応じて負担するが、規約でこれと異なる定めをすることができる」は、正しい。

参考:区分所有法第14条4項
「(共用部分の持分の割合)
 第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」


3 理事長(管理者)は、共用部分に係る損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。

〇 正しい(適切である)。 管理者(理事長)は、共用部分に係る損害保険契約では、区分所有者を代理する。

 こんども、区分所有法第26条、
「(権限)
 第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」
 とあり、
 区分所有法第26条2項によれば、設問の「理事長(管理者)は、共用部分に係る損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する」は、正しい。


4 共用部分について、損害保険契約をするか否かの決定を、理事会の決議により行う旨を規約で定めることはできない。

X 誤っている(適切でない)。 共用部分について、損害保険契約をするのは、管理に関する事項となり、規約で別段の定めができる。

 今度は、かなり高度な設問。

 共用部分について、損害保険契約をするのは、区分所有法第18条、
「(共用部分の管理)
 第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」
 とあり、
 区分所有法第18条4項によれば、共用部分につき損害保険契約をすることは、「共用部分の管理に関する事項とみなされ」、すると、共用部分の管理に関する事項で重大な変更(第17条参照)でないなら、原則:集会の決議から、区分所有法第18条2項により、規約で別段の定めもできますから、設問の「共用部分について、損害保険契約をするか否かの決定を、理事会の決議により行う旨を規約で定めること」は、可能なため、設問は、誤りです。


答え: 4 

 巨大地震が予想される今日、地震に関して、いい出題です。

《タグ》地震保険 地震保険に関する法律 区分所有法 共用部分の負担 共用部分の管理に関する事項 規約可


★小規模滅失(建物価格の2分の1以下)と違って、建物価格の2分の1を超える(大規模滅失)ときは、他の区分所有者に対しても影響が大きいので、個人で勝手な廊下や階段などの共用部分の復旧は許さない。

  ★特別に4分の3以上多数の賛成が必要で「特別多数決議事項」と呼ばれる。(その8の5)

★復旧が否決されたら、どうなるのか

  この大規模滅失の場合も、小規模滅失と同じように、集会で復旧が否決されたら、その共用部分はもう壊れたままです。ただし、保存行為は行えます。(壊れた物の保存行為は限度があるでしょうが)
  また、「復旧の決議」とは別に、「建替えの決議」(第62条)をすることは可能ですので、マンションの住民は建替えを検討することになるのか、そのままほったらかしにするのか選ぶことになります。

  でも、建物の大規模滅失では、そのマンションから逃げ出すこともできます。それが、14項 旧12項 にありますので、参考にしてください。  


{設問}大規模減失(建物の価格の2分の1以下に相当する部分の減失以外の減失をいう。)が生じた場合の共用部分の復旧については、規約で定めれば、集会の決議を経ることなく管理組合が復旧するものとすることができるか。

答え:出来ない。

区分所有法第61条4項によれば小規模滅失(建物の価格の2分の1以下に相当する部分の減失)の場合については規約の定めが出来るが大規模滅失では定めがなく、規約で別段の定めは出来ない。

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第六十一条

6項  前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。

過去出題 マンション管理士 R01年、
管理業務主任者 未記入

賛否を記載・記録しなければならない...大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)での共用部分の復旧に「賛成・反対」は非常に重要で、金銭負担と、あとで出てくる(7項)買取請求などで使用するので、必ず議事録に記載または記録が必要。

★復旧に賛成か反対かは重要

本6項を読んだだけでは、どうして、各区分所有者ごとに復旧に対する賛否を、議事録に記録する必要があるのか疑問でしょうが、復旧の決議に賛成したか反対したかで、今後その者の権利義務に次の7項(買取請求)以降に規定されるように差が発生します。

 そのため区分所有者のうち誰が復旧に賛成し、誰が賛成しなかったかを明確にしておく必要がありますから、この大規模滅失の集会(総会)の議事録には各区分所有者の賛否を明記することとされます。

 なお、改正法で集会議事録に従前の書面の他電磁的記録も追加されましたから(第42条)、この復旧決議の議事録でも当然に電磁的記録が含まれます。
 「記載又は記録」となっているのは、その意味です。

<参照>区分所有法 第42条1項(議事録)

第四十二条  集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。

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第六十一条

7項  第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

過去出題 マンション管理士 R02年、H29年、H20年、H19年、H14年、
管理業務主任者 H30年、

★決議賛成者の全部とか一部など、分かり難い。注意して読むこと。また、前段・後段で8項以下の適用があるので、これも注意のこと。

★決議に賛成した区分所有者”以外”の区分所有者...大規模滅失の集会での反対・棄権・欠席者

★買取請求ができる...「形成権」である。これは、単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利のこと。
  法文に「形成権」という概念が示されているわけではないが、講学上、法律行為の分類として用いられる。 具体的には、解除権・予約完結権・取消権・相殺権などがある。

  債権のように明文ではないため、時効期間が問題となるが、判例は債権に準じて10年としている。 もっとも、形成権の中には独自の時効・除斥期間が規定されているものもあり(例:取消権)、その場合には規定による。
  前に説明した、区分所有法第10条での区分所有権売渡請求や、後で出てくる、建替え(第63条)での区分所有権などの売渡請求も、形成権です。

  形成権となると請求権者の一方的な意思表示で、相手方との売買契約が成立します。
 具体的には、請求された相手方は、売買代金を時価で支払う義務を負い、その結果、その建物及び敷地に関する権利を取得し、請求をした者は、その引渡し・移転登記の義務を負います。

★少数の保護 〜復旧に反対の者等は建物から出ていく〜

  大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)において、第61条5項の規定により、集会で復旧決議が成立した場合は、その建物は復旧をすることになります。


 区分所有法では復旧決議に限らず、すべての集会で決議された内容は、反対者や集会の欠席者や棄権者も含めて区分所有者全員を拘束します。(多数決の原理)
 しかし、小規模滅失(建物価格の1/2以下の滅失)の復旧とは異なり、通常、大規模滅失(建物価格の1/2超)の復旧の場合にはその復旧費用が大きいことが想定されますから、各区分所有者が負担する復旧費用の額や、また建物を復旧しても必ずしも元の状態に建物の価値が復元されるわけではないこと等から復旧に反対する区分所有者も少数でしょうが存在するでしょう。

 いくら区分所有法で規定する多数決の原理に従えといっても、民主主義では、個人の意思を尊重する必要性もあります。
 そこで、大規模滅失の復旧の場合では、復旧決議に賛成しなかった少数の区分所有者の利益擁護のため、復旧に反対者等は復旧決議の日の2週間後(初日不算入、中14日)から、賛成者の全部または一部の者に対して、自己の建物の権利(区分所有権)及び敷地に対する権利(敷地利用権)を「時価での買取を請求する」ことにより、自己の意思で、復旧を選ばず区分所有建物から出ていく、つまり、区分所有関係・管理組合からの離脱ができることとしています(7項)。

 これにより、復旧に賛成しなかった区分所有者は、復旧事業に要する費用を清算して以後の負担を免れることを可能とするものです。

「買取請求ができる者は、復旧決議に賛成しなかった者」ですから、復旧決議の反対者・棄権者・欠席者がこれに該当し、集会に出席しなくても、書面決議や委任状で復旧に賛成した者は当然に復旧決議賛成者となります。

 買取請求を受けるのは、復旧決議賛成者及びその承継人(包括承継人は勿論、特定承継人も含む:区分所有法第46条1項参照。)です。
 なお、復旧決議賛成者が買取指定者を決めた場合には、復旧決議賛成者に代わって、その買取指定者が買取請求を受けます。(8項)

◎復旧に反対の人も既になされた復旧決議に拘束されていますから、必ずしも復旧賛成に参加できないというわけではなく、気分が変わって復旧決議に賛成となれば買取請求権を行使しないことで復旧に参加することもできます。

 しかし、復旧の決議はなされたが買取請求の支払いで復旧資金が捻出困難となる場合もありえますから、集会を開催するにあたっては、非賛成者は一応買取請求をすることを前提に復旧計画を立案すべきでしょう。

★買取請求

 大規模滅失の復旧決議に反対した人や議決権を行使しなかった人は、決議に賛成した人(全員でも特定の一人でもいい)に対して、決議の2週間後から建物(専有部分と共用部分の持分)と敷地利用権を「買い取れ」と請求できます。
 なお、復旧決議の賛成・不賛成者などは、その集会の議事録に記載・記録されています。(6項)

    ◎この2週間の間に復旧に賛成した人たちは、自分たちで買い取るか、また他に「買取できる人(買取指定者=ディベロッパーなど)」を指定するか検討する。(参照:8項)

★買い取れと請求できる相手は、賛成した人なら誰に対してでもいい。

  買取の相手は、賛成した区分所有者の全員でもいいし、その一部(管理組合の理事長一人または理事数名)でもいいし、隣人とかの個人に対して請求できる。
  当然、買取請求が特定の人に集中したら、その人はかなりの資金が必要となる。すごい話だけど。(現実に、阪神・淡路大震災後に、復旧に反対した区分所有者、10数名が賛成した一人の区分所有者(法人)に請求し、時価の算定が争われた。)

 そこで、買取請求を他の区分所有者に移したり(7項後段)、買取指定者を決めること(8項)ができるようになっています。

★買取請求は形成権

 この買取請求があると、請求された人の承諾がなくてもその売買契約は、直ちに成立しているので注意。(一方の単独行為で成立する。これが形成権。

 買取請求により、請求された方(相手方)は請求した人の建物(専有部分と共用部分の持分)の権利とその敷地に関する権利(敷地利用権)を取得し、時価で売買代金の支払義務を負う。(同時履行)

  ただし、請求された者が売買代金を直ちに支払えないときは、裁判所に訴えて「相当の期間」待ってもらえる(13項)

 *買取請求権が形成権ということは、
    買取請求の意思表示だけで、同時に当事者間(買取請求者と受ける人)に売買契約が成立し、買取請求者である売主には移転登記義務(抵当権がついていれば、それを無くすこと)が生じ、請求を受けた買主には時価による代金支払い義務が生じています。

★買い取れと指定された人が買い取れないときは、2ヶ月以内に復旧に賛成した他の人たちに、買取請求を移すこともできる。(7項後段)(再買取請求制度
  買取請求者は、特定の復旧決議賛成者だけに買取請求権を行使できますから、その特定の決議賛成者が全ての買い取りに応じられればいいのですが、そうでない場合もあります。
 そのような場合には、裁判所により、代金の支払いを延ばしてもらい( 15項 13項 参照)、また、買取の請求を受けた日から2ヶ月以内なら、他の決議賛成者に共用部分の持分割合に応じて(区分所有法第14条参照)時価で建物とその敷地に関する権利を再び買取請求ができるという、複雑な仕組みになっています。

     負担金額の割合は、区分所有法第14条による。

 <参照> 区分所有法 第14条 共用部分の持分の割合:

各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

★共有では、持分は均等になる。でもマンションで広さが違うのに不公平。そこで、自己所有部分の床面積での比例配分にした。

  しかし、規約で別の定め可(第14条4項)。

<参照>共有 民法 第250条: 

各共有者の持分は相均しきものと推定す。


 <参照>区分所有法 第14条2項

 2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

 ★ しかし、規約で別の定め可(第14条4項)。

★「建物及びその敷地に関する権利」と「区分所有権及び敷地利用権」の表現の違い 〜建物の専有部分が無くなっていることもある〜

  本7項での買取請求の対象になっているのは、「建物及びその敷地に関する権利」です。
  具体的には、建物の専有部分と共用部分の共有持分、専有部分を所有するための敷地に関する権利などで、これは売渡請求権を定めた規定(後の第63条4項など)では「区分所有権及び敷地利用権」となっていて、殆ど内容は同じですが、建物の滅失により、その区分所有者の専有部分が無くなっている場合を想定したとのことです。

★時価とは 〜決めるのが難しい〜

  買取請求権の時価を算定する基準は、買取請求権が行使された時でいいのですが、価格の決定には、災害にあったマンションでは特に争点になっています。

  1.無被災説
    時価=被災のないことを前提とした建物価格 − 復旧工事費


    *復旧工事費・・・被災前の状態に復旧するとともに安全性を確保するのに必要かつ相当な工事に対応する費用を指すと考えるべきである。
 したがって、機能の向上を目的とする工事は含まれず、使用部材等の更新は復旧工事に必要かつ相当なものと認められた場合に控除されるべき復旧工事費に含まれる。
 買取請求の対象となった住戸の清掃費用や不要物の処分費は、復旧工事に必要なので復旧工事に含む。
 追加費用は、含まないことが多い。
  後の再販時に必要な仲介手数料や登録免許税なども含まない。

  2.被災前提説
    時価=被災があったことを前提とした建物価格(復旧後の市場価格) − 復旧工事費

   1.の「無被災説」の方が、時価は高くなり、買取請求者と決議賛成者(買取請求を受ける者)での争いです。阪神淡路大震災での判例は 1.無被災説 をとっているようです。

   被災前提説をとらないその理由は、時価の算定が復旧決議の際には明確でないとのことです。

 <参考>大阪地方裁判所:平成8年10月25日:(ワ)11246号 (判例検索にはないが)

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第六十一条

8項  第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。

過去出題 マンション管理士 H22年、H20年、H14年、
管理業務主任者 H30年、

★建物と敷地に関する権利を買い取れといわれても、復旧賛成者にお金が無ければ、決議から2週間以内に復旧賛成者は全員で合意して、「買取指定者(ディベロッパーなど)」を指定する。この買取指定者(複数でも可)が、反対者などに、決議から2週間以内に書面で、買取指定者に指定されたので私が「買います」と通知すれば、反対者などは、買取指定者に買取の請求をする。これで、他の賛成者の方に買い取れとはいえなくなる。

★買取指定者

  前項(復旧)の決議後2週間以内に、買取人を指定する
 この2週間(初日不算入、中14日あること)があるから、7項では復旧決議反対者などは決議後2週間を経過しないと「買取請求」が出来なくなっている。

★買取指定者の制度は、特定の復旧賛成者に買取請求が集中して、その人が支払ができない状況から生まれました。
 復旧賛成者が
全員の合意で買取指定者を選任し、これを受諾した買取指定者は就任の旨を書面で復旧決議に賛成しなかった区分所有者に通知する必要があります(8項)。
 この買取指定者の通知がなされると、通知を受けた区分所有者は、もうその買取指定者に対してだけ、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取れとの請求(前項前段=7項前段)ができます。

 なお、復旧決議賛成者の全員の合意で、買取指定者に指定されてもそれだけでは当然には買取指定者になりません。この場合、指定された者の承諾が必要なのは云うまでもありません。

 買取指定者の指定・通知期間は復旧決議から2週間以内と短い期間ですから、現実には復旧決議の賛成者は、あらかじめ買取指定者を考えておき、買取指定者の決議(賛成者の全員一致が必要)を行うことになるでしょう。

 この買取指定者の資格には特に制限がありませんから、自然人でも法人でもよく、また人数の制約もありません。
全部の室(専有部分)の買取を希望する区分所有者がいればその人でもいいし、特にその建物の区分所有者である必要もありませんから外部のディベロッパーや建設会社など資力のある第三者や開発に興味を示す法人でもかまいません。

 もっとも、買取指定者に就任したという通知は個別通知ですから、通知漏れや通知が遅れたりすると、反対者などからは、「買取指定者に請求すべき者」と「賛成者に請求すべき者」が混在する危険もありますので通知漏れがないようにすることです。

 なお、複数の者が買取指定者に指定された場合には、これら複数の買取人が共同買主となります。その売買代金の支払いは、当事者間で特別に連帯債務とするなどの取り決めがなければ、民法の規定により、売買代金を人数で均等に分割した金額で支払う義務を負います。(民法第427条参照)

<参照>民法 第427条 (分割債権及び分割債務)

第四百二十七条  数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

    (*注):ここ復旧では「買取(かいとり)指定者」であとの建替え決議(第63条4項)では「買受(かいうけ)指定者」になっているので注意のこと。

★現実には、買取指定者(候補者)は、復旧集会の前に予定して決めておかないと、復旧決議後の指定や通知など日にちが少ない(2週間以内)ので注意のこと。


★買取指定者は、決議賛成者の”全員の合意”を必要とする 〜多数決でもいいのでは?
  法改正時に、全員の合意でなく、ここも多数決で、買取指定者を指定できるようにしたらという話もあったようですが、保証責任を持たせるには、全員の合意が必要と考えたとのことです。


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第六十一条

◎令和3年9月1日施行内容;「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条
 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


「新設」 これを受けて
 9項 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入
◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、新しく創設された規定です。

★脱ハンコ、書面から電磁的方法へ
 インターネットやスマートフォンの普及にみるように、日本や世界の社会経済は、過去のアナログ時代から、様々なものがデジタル時代に入っています。
 また、2020年からの新型コロナウイルス感染症の蔓延により、政府もやっと行政において「書面、押印、対面」が必要か、その見直しをしています。
 その一環として、まず、過去からの習慣である、本人や法的な証明として「署名」の他に「押印」が必要かを検討し、区分所有法でも、第42条3項の議事録では、「押印」を廃止しました。

 次の段階として、「脱書面、脱対面」が挙げられます。
 新型コロナウイルス感染症が収まらないため、「対面」での交渉はできるだけ避ける必要があり、そのためにはいちいち必要な書面を持参することは避けるべきで、そこでの手段は郵送となりますが、現在では、大量のデータをもつ書類でも、メール等で送ることが可能です。
 このような背景から、この規定が新設されました。

★原則:買取指定者は、自分が買取りをしますと「書面」で、決議賛成者以外の区分所有者に通知が必要 → 指定されたという通知の「書面」を「電磁的方法」にできる

 前の8項により、買取指定者は、決議賛成者以外の区分所有者に「書面」で、私が買い取りますと通知しなければなりませんが、該当の区分所有者が、「承諾するなら」この通知を「書面」でなく、「電磁的方法」でも出来るとしました。
 しかし、現実には、未だ、多くの区分所有者が、パソコンを持っていないとかインターネット環境にないことを考えると、この電磁的方法が採用されるには、時間がかかります。
解決策:政府が全ての国民が電磁的方法を使えるように必要な電子機器を与えることです。

★電磁的方法の種類及び内容を示して相手の承諾を得ること

  相手の承諾を得るには、あらかじめ用いる電磁的方法の種類(電子メール、、ホームページへ書き込む、CDやUSBメモリー等に記録してそれを送付するなど)を示します。
 相手がそれらを利用して、自分の意思を表明できないと有効ではありません。

 しかし、この方法は、本人確認が大変に難しく、第三者による本人への「なりすまし」や改ざん防止のため、電子署名やパスワード交付等の対策を十分検討しておく必要があります。

 また、1回目は「承諾」しても、途中で気が変わり、2回目は「不承認」となった時などの対応法も規定が必要です。

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第六十一条

◎令和3年9月1日施行内容;「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条
 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


{改正}これを受けて、9項は10項へ
 10項 9項  買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となったものを除く。以下この項及び 第十五項 第十三項 において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。
過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H30年、

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、旧9項が新しく10項に変更されました。

★指定した買取者に資力が充分にない(買い取り金を払えない)と困るので、そのときは、復旧決議の賛成者全員の連帯責任となる。
民法第432条以下の適用となる。

    勿論、買取指定者がお金を持っていることを、証明すれば、連帯責任は逃れられる。

★買取指定者の資力増強策として、選任した決議賛成者の選任責任として買取資力の保証責任が認められています。

 買取指定者が請求された代金を支払わない時は、復旧決議賛成者は連帯してその支払い(遅延損害金も含む)の責めを負うこととされています。
具体的には、買取を請求した区分所有者は、復旧決議賛成者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての復旧決議賛成者に対し、全部又は一部の履行を請求することができます。

<参照>民法 第432条 (改正有:新設)

(連帯債権者による履行の請求等)
第四百三十二条 債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

★検索の抗弁権がある 
 ただし、この支払いの連帯責任は二次的な保証人(補充性)ですから、
民法と同様に「検索の抗弁権」(主たる債務者である買取指定者に執行の容易な資力が認められることを証明して請求を拒絶する権利。民法 第453条)が認められています。

<参照>民法 第453条(検索の抗弁)

第四百五十三条  債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない

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第六十一条

◎令和3年9月1日施行内容;「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条
 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


{改正}これを受けて 10項は11項へ変更
 11項 10項  第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者。次項において同じ。)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。

過去出題 マンション管理士 R03年、
管理業務主任者 未記入

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、旧10項が11項に変更され、新しく「次項において同じ」文章が加えられました。

★権利関係を明確にする

 大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)において、復旧決議(5項)があっても、反対者・棄権者・欠席者が「買い取り請求」をいつまでもしないと、権利関係が確定しないので、4ヶ月以上の期間を定めて、買取請求をするかどうかの回答を要求できる。必ず「書面」で催告すること。

★この期間内(4ヶ月以上の期間)に、買取請求をしなかった反対者などは、もう買取請求が出来なくなる。( 13項 11項



★催告できるのは

  @5項で定める「復旧の集会」を招集した者です。
   または、
  A8項で「買取指定者」として、指定された者がいる時には、その人が、集会の招集者に代わって催告できます。

★具体的な書面の文章は?

  請求するか否かの確答をするのは、4ヶ月以上の期間となっていますから、「本催告を 受け取った 受けた 日の“翌日から4ヶ月以内”に、買取請求をするのか、しないのか、xxxまで、ご回答ください。」のようになります。
  そして、催告は書面でしますが、その回答は、必ずしも書面でなくても、発信した時に効力を生じる(契約の発信主義、民法第526条1項参  → 到達主義へ改正)到達した時に効力が生じると解されますが、意思表示をした日付を入れて書面で行うべきです。

<参照>民法 第526条 (改正有。 旧第526条1項は、削除。旧第526条2項は、新第527条へ)

(隔地者間の契約の成立時期)

第五百二十六条  隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
(通信手段が発達したので削除) → 民法第97条1項へ(到達主義へ)

2  申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

------------------------------------------------
(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

----------------------------------------------------

(承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期)
第五百二十七条 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。


★何故、催告期間は「4か月以上」と定めたのか?

 法案作成者は、次のように説明しています。

 1.区分所有権を保持するのか、買い取らせるのか検討に必要な期間が必要
   復旧決議があれば、(多くの区分所有者は)工事費を負担してマンション内にとどまることになりますが、マンションの外にでることを選んだ場合(買取請求を行う)には、引っ越し先を確保する必要があるため、猶予期間は必要。

 2.4ヶ月でいいのか?
   建替え決議での売渡請求権の行使期間が最長で、催告の日から(2ヶ月+2ヶ月の)4ヶ月であることから、これとの均衡で4ヶ月とした。(第63条2項、4項参照)

 期間にしろ、区分所有者の数など、法律は案外簡単な理由で定まるものですね。

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第六十一条

◎令和3年9月1日施行内容;「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条
 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


{新設}これを受けて、12項を新設
 12項 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、新しく12項が設けられました。

★催告も書面から電磁的方法へ

★第5項の集会を招集した者又は買取指定者の買取をするかどうかの催告も書面から電磁的方法に変更できる
 第5項は

<参照> 区分所有法 第61条5項

 5項  第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

 

です。

 大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)で滅失した廊下や階段などの共用部分の復旧の決議賛成者以外は、その決議から2週間以内に、決議賛成者(又は買取指定者)に対して、その決議から2週間以内に、時価での買取請求ができますが、いつまでたっても買取請求がないのでは、決議が確定しません。
 そこで、集会招集者(又は、買取指定者)は、4ヵ月以上の期間を定めて、買取請求をするかどうかの催告を原則:書面で行いますが、催告を受ける区分所有者が催告は電磁的方法(電子メール、ホームページへの書き込み、CDやUSBメモリーへ書き込んで送付するなど)でいいと承諾するなら、この催告を書面から電磁的方法へ変えられます。


 脱書面、脱対面の方法です。

★ただし、相手方が電磁的方法を承諾しない時は、従来からの書面での催告となります。

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第六十一条

 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


{改正}これを受けて、11項を13項に変更
 13項 11項   第十一項に 前項に 規定する催告を受けた区分所有者は、 同項の 前項の 規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、旧11項から13項に変わり、文章も変わりました。

★権利関係の確定

 買取請求をするのか、しないのかの催告を受けた後、この期間内(4ヶ月以上の期間内)に、復旧決議で意思表示をしなかった反対者・欠席者・棄権者などは、もう買取請求(7項前段の規定)が出来なくなる。

 これにより、買取請求者・支払者などの権利関係が確定する。

★「買取請求」ができなくなった人の、権利はどうなるのか
  区分所有法では、この後の規定がないため、催告を受けて4ヶ月以上を過ぎても、態度を明確にしなかった、反対者・欠席者・棄権者は、復旧決議賛成者と同様な立場になります。

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第六十一条

第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。


{改正}これを受けて、12項を14項に変更
 14項 12項  第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

過去出題 マンション管理士 H20年、
管理業務主任者 H24年、H19年、

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、旧12項から14項に変わりました。

★大規模滅失があってもで何も決まらない時

 大規模滅失(建物価格の1/2超の滅失)があっても、6ヶ月の間に「復旧の決議」(同項=第61条1項)もまた、「建替えの決議」(次条1項=第62条1項、第70条1項(団地))もなされないときは、賛成・反対に関係なく、各区分所有者は他の区分所有者に、「買取請求」ができる。

★「建物及びその敷地に関する権利」と「区分所有権及び敷地利用権」の違い

  7項でも説明しましたが、復旧決議での買取請求の対象になっているのは、建物及びその敷地に関する権利です。
  具体的には、建物の専有部分と共用部分の共有持分、専有部分を所有するための敷地に関する権利などで、これは売渡請求権を定めた規定(第63条4項など)では「区分所有権及び敷地利用権」となっていて、殆ど内容は同じですが、第61条では建物の滅失により、その区分所有者の専有部分が無くなっている場合を想定したとのことです。

<参照> 同項とは=第61条5項:

 第一項本文に規定する場合(注:建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失したとき)を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。(注:大規模滅失となる)

 次条第1項とは=第62条1項:(建替え決議);

 集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

 第70条1項: (団地内の建物の一括建替え決議);

 団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。


★復旧の決議がないときにはどうするか 〜復旧が否決の場合も〜

  建物の価格の1/2を超える大規模滅失があり、その場合、第61条5項により、集会により復旧決議が特別多数決議(区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数)で可決されれば、第61条6項以下の手続きを経て復旧工事に至るわけです。
 また、復旧でなく、次第62条で規定される「建替え決議」、または団地関係であれば第70条の「団地内建物の一括建替え決議」がなされた場合は、それらに従って建替えがなされます。

 しかし、建物が大規模に滅失しても、だれも集会を開かず、また集会での復旧の議案が否決された場合には、その建物は、壊れたまま放置されることになります。
いつまでも壊れたままの建物に住むことは、雨漏りや倒壊などの危険性もあるでしょう。

 そこで、建物の価格の1/2を超える大規模滅失のあった日から6ヶ月を経過しても、復旧の決議もなく、また建替えの決議もないとすると復旧の見込みがないものとして区分所有者は、他の区分所有者に自己の建物の権利及び敷地の権利を時価で買取請求をすることにより、属している区分所有関係・管理組合からの離脱(建物から出ていく)ができるようにしたのが本14項 12項 です。

 この場合の「買取請求」もいわゆる形成権(一方的に権利を形成する権利)で通常の契約のように申込みと承諾という意思表示の合致により契約が成立するものではありませんから、買取請求者とその請求権を受けた相手方との間でその意思表示の到達と同時に、移転登記の義務と代金を時価とした支払義務がある売買契約が成立することになります。

 なお、買取請求権の行使を受けた区分所有者は、また他の区分所有者に対して再度、買取請求権の行使ができます。

 しかし、急に買い取れといわれても、資力がない区分所有者は困ってしまいます。その場合には、裁判所が支払について、相当の期限を認めてくれます。(15項 13項
ですが、いくら時間を猶予してもらっても究極的に資力のない区分所有者が存在することも考えられますので、その場合の手当てをどうするか、今後の法改正が必要な箇所です。

★他の区分所有者とは?

  集会を開いて、復旧の決議や建替えの決議があった場合には、賛成者と反対者等(欠席者・棄権者)はその議事録に記載・記録されています(第61条6項、第62条8項)が、集会も開催されていない時や、集会で復旧の決議や建替えの決議がなされない時には誰が賛成か反対かが明確ではありません。
  そこで、本 14項 12項 での買取請求の対象となる「他の区分所有者」には、賛成した区分所有者だけでなく、反対した区分所有者も含まれます。
 また、復旧や建替えの決議が集会で否決されれば、賛成者であっても、この買取請求をおこなって、その建物からでていく、区分所有関係から離脱できます。

★買取請求では区分所有者の整理や登記が面倒

  規定では建物から出ていく区分所有者は他の区分所有者に対して買取請求ができることになっていますので、ある区分所有者Aが他の区分所有者Bに買取請求をしたところ、すでにBも買取請求を他の区分所有者Cにしている場合や、Bが既に区分所有者でなくなっていることも考えられます。
 所有権者であることは、不動産登記簿で確認できますが、数が多いと処理も大変です。

 このような面倒な事態が起こりえますので、集会が開催できるなら、誰が買取請求に応じることができるのか、請求金額の総額はいくらになるのかなどを事前に把握し、その後の処理を進める方法もきめておくことが必要です。

★買取価格(時価)の決め方

 何が時価=売買代金かは、1次的には売り方・買い方の両当事者間の協議で決定され、協議が整わない場合は裁判となり、最終的に裁判所が不動産鑑定をもとに決定しますが、建物の現状が大規模に滅失している状況ですからそれ自体を直接評価するのは非常に困難であり、経済的には復旧完了後の建物・敷地利用権の評価額から当該専有部分の復旧費及び共用部分の復旧費の当該専有部分の持分分を控除した額が妥当でしょう。

★時価とは
  買取請求権の時価を算定する基準は、買取請求権が行使された時でいいのですが、価格の決定には、災害にあったマンションでは特に争点になっています。

  1.無被災説
    時価=被災のないことを前提とした建物価格 − 復旧工事費
  2.被災前提説
    時価=被災があったことを前提とした建物価格 − 復旧工事費

   無被災説の方が、時価は高くなり、買取請求者と決議賛成者(買取請求を受ける者)での争いです。判例は 1.無被災説 をとっているようです。

★例え滅失の日から6ヶ月を経過しても、復旧や建替えの決議はできるが、誰かがこの「買取請求権」を行使したら、買取の相手には、復旧や建替えに反対の人も可能なため、反対者が残ることもあるため、この後での、復旧の決議や建替えの決議はできなくなるおそれがある。

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第六十一条
◎令和3年9月1日施行内容;「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条
 第六十一条第十三項中「第九項本文」を「第十項本文」に改め、同項を同条第十五項とし、同条第十二項を同条第十四項とし、同条第十一項中「前項に」を「第十一項に」に、「前項の」を「同項の」に改め、同項を同条第十三項とし、同条第十項中「当該買取指定者」の下に「。次項において同じ。」を加え、同項を同条第十一項とし、同項の次に次の一項を加える。
 12 第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。

第六十一条第九項中「第十三項」を「第十五項」に改め、同項を同条第十項とし、同条第八項の次に次の一項を加える。
 9 買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。

{改正}これを受けて、13項を15項に変更
 15項 13項 第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は 第十項本文 第九項本文 に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。
過去出題 マンション管理士 H18年、H16年、
管理業務主任者 未記入

◎令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって、旧13項から15項に変わり、文章も変わりました。

★買取資金が充分にない時

 償還(支払)しろとか買い取れといわれても、金の無い人に対しては、裁判所が相当の期限を与えてくれる。

<参照>第2項とは、=第61条2項:

 前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。

<参照>第7項とは、=第61条7項:

 第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

<参照>第8項とは、=第61条8項:

 第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。

<参照>前項とは=第61条 14項 12項

  第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項又は第七十条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

<参照> 第10項 第9項 本文とは=第61条 10項 9項

 買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となったものを除く。以下この項及び 第十五項 第十三項 において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。

★裁判所により、支払につき相当の期限の猶予が与えられる立場の者

 復旧費用の償還(支払い)請求や買取請求を受けた区分所有者や買取指定者は、請求を受けた時から、償還請求や買取請求に応じて、支払いの義務を負うことになります。

 しかし、その請求が突然であったり、金額が過大で、支払ができない状況も考えられます。

 そこで、以下に該当する場合には、裁判所に訴えて、支払期限の猶予を貰う事ができます。
  @建物価格の1/2以下(小規模滅失)で、共用部分を復旧した区分所有者から、直した費用の請求をうけた区分所有者(区分所有法第61条2項参照)
  A建物価格の1/2超(大規模滅失)で、復旧の決議で買取請求を受けた、復旧決議賛成の区分所有者(区分所有法第61条7項 参照)
  B建物価格の1/2超(大規模滅失)で、復旧の決議で、買取指定者になった者(区分所有法第61条8項 参照)
  C建物価格の1/2超(大規模滅失)で、復旧等の決議がないときに、買取請求を受けた区分所有者(区分所有法第61条 
14項 12項 参照)
  D建物価格の1/2超(大規模滅失)で、復旧の決議で、買取指定者になった者が支払えない時に、連帯責任を負うことになった決議に賛成した区分所有者(区分所有法第61条 
10項 9項 参照)

★相当の期限とは?

  相当の期限は、裁判所がその時の状況で判断することになります。
  また、相当の期限が裁判所から許与されると、請求者の「建物およびその敷地に関する権利の引渡し義務が、被請求者の代金支払い義務より先行することになります。通常の同時履行関係が解消されます。


{設問-1}建物の価格の1/2に相当する部分が滅失した場合における当該部分の復旧に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 区分所有者は、滅失した自己の専有部分の復旧の工事に着手するまでに、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議があった場合は、その専有部分の復旧の工事を行うことはできない。

答え: 間違いである。できる。 
区分所有法第61条1項「建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項又は第七十条第一項の決議があつたときは、この限りでない」の但書の規定により、自主復旧が制限されるのは共用部分のみであり、専有部分の復旧費用は各区分所有者の負担であるため、できる

2 集会において滅失した共用部分を復旧する旨の決議をする場合は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数により決議しなければならない。

答え:間違いである。 過半数の決議でいい。
 区分所有法第61条3項「第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる」 の規定により、集会で決議していいが、建物の価格の1/2以下に相当する部分の滅失は、個人でも復旧ができる(区分所有法第61条1項参照)小規模滅失であり、普通決議(区分所有法第39条参照)の過半数の決議で復旧可能。
 
  *ここは、建物価格の1/2を越えた時の区分所有法第61条5項「第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる」との混同を狙った設問。*

3 区分所有者は、建物の一部が滅失した日から6ヵ月以内に単独で滅失した共用部分の復旧を行った場合に限り、他の区分所有者に対して、その復旧に要した金額を、共用部分の共有持分の割合に応じて償還すべきことを請求することができる。

答え間違いである。このような規定がない。 
区分所有法第61条2項「前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる」とあり、償還請求に期限は付されていないため時効にならない限り請求可能。

4 集会において減失した共用部分を復旧する旨の決議があった場合には、区分所有者は、その復旧に要する費用の支払について、裁判所に相当の期限の許与を請求することはできない。

答え:正しい。 
区分所有法第61条13項「第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第九項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる」 の規定では、集会による決議(区分所有法第61条3項)は入っていない。

正解:4


{設問-2} 平成14年 マンション管理士 「問10」

〔問10〕 マンションの一部が滅失した場合の復旧等に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 小規模滅失(建物の価格の2分の1以下に相当する部分の滅失をいう。以下この問いにおいて同じ。)が生じた場合において、復旧及び建替えのいずれの決議も集会においてなされないときは、各区分所有者は、単独で、滅失した共用部分を復旧することができる。

答え:正しい。 
建物の区分所有等に関する法律(以下。区分所有法という。)第61条第1項によると、小規模滅失の場合、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに、復旧決議及び建替え決議がなければ、各区分所有者は、単独で、滅失した共用部分を復旧することができる。よって、本肢は正しい。

2 小規模滅失が生じた場合における復旧の決議は、区分所有者及び議決権の各過半数で成立する。

答え:正しい。 
区分所有法第61条第3項によると、小規模滅失の場合の共用部分の復旧は、集会の普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議)で決することができることになる。よって、本肢は正しい。

3 大規模滅失(小規模滅失以外の滅失をいう。以下この問いにおいて同じ。)が生じた場合において、復旧の決議が成立したときは、これに反対した区分所有者は、決議に賛成した区分所有者に対し、その有する建物及び敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。

答え:正しい。 
区分所有法第61条第7項によると、大規模滅失の場合、決議賛成者以外の区分所有者は、決議賛成者である区分所有者に対して、その有する建物及び敷地に関する権利を時価で買い取るべきことの請求、すなわち「買取請求」をすることができる。よって、本肢は正しい。 (注:建替えは「売渡請求」となっていて、賛成者からおこなう。)

4 大規模滅失が生じた場合において、復旧及び建替えのいずれの決議も集会においてなされないまま滅失から6ヵ月が経過したときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、その有する建物及び敷地に関する権利を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

答え:間違いである。 
区分所有法第61条(旧第8項→新第12項)によると、大規模滅失の場合、復旧及び建替えのいずれの決議も集会においてなされないまま滅失から6ヵ月が経過したときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、その有する建物及び敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求できる。買取の請求は認められているが、他の区分所有者に対する「売渡請求」は、認められていない。よって、本肢は誤りであり、本問の正解肢となる。

正解:4

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ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

最終更新日:
2022年12月16日:見直した。
2022年11月21日:第61条7項に判例から「時価」を追記した。
2022年 1月30日:見直して、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災マンション法)の解説を追加した。
地震保険に図など入れた。

2021年12月19日:令和3年(2021年)の出題年を入れた。
2021年 8月 6日:第61条(復旧)8項〜15項を、令和3年9月1日施行:「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」第24条によって変更した。
2021年 3月23日:改正民法第97条(到達主義へ)を第61条10項に入れた。
2021年 3月 6日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 9月23日:復旧を見直して、地震の写真など入れた。
第61条5項に地震保険を入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 8月 7日:見直した。
2018年 3月13日:平成29年の出題年を入れた。
2017年10月23日:第61条12項に「買取請求を受けた区分所有者は、他の区分所有者に請求できるが、究極的に資力の無い人がいる場合での、法の不備」を入れた。
2017年 7月22日:被災区分所有建物の債権等に関する特別措置法の解説を追加した。
2017年 4月 6日:平成28年の出題年を入れた(該当はないが、文章を見直した)
2016年11月 1日:第61条の「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」の説明に一部、「区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数」に変更した。
2016年 4月10日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日;平成27年の出題年を入れた。
2015年 4月 5日:平成26年の出題年を入れた。
2014年 2月23日:第61条に改正「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」と「築物の耐震改修の促進に関する法律」を入れた。
2013年 8月17日:被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の改正の施行日訂正 6月→7月、政令と図を入れた。
2013年 8月 7日:被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の改正の概要を入れた。
2013年 7月17日:被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の改正を入れた。
2013年 6月23日;第61条をさらに大幅に追記した。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2012年 8月18日:第61条の引用問題「設問−2」の選択肢4の新12項、入れた。
2012年 3月 6日:平成23年の出題など確認。
2011年 7月29日:一部追記した。
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年6月27日:第61条の追記終わり
2010年6月26日;第61条を大幅に追記中
2009年11月6日:買取請求で加筆
2009年10月29日:JR西日本の福知山線脱線事故を追加
2009年3月25日

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